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2008年8月20日の午後2時。私は彼と立川駅で待ち合わせた。 この日、彼は濃い紺色のスーツとグレー色のシャツに、小洒落たループタイをしていた。 そして北口のほうに行くと、とある古い喫茶店に入った。 彼はクリームソーダを、私はアイスティーを頼んだ。 彼「ここ来たの初めてなんスよ。」 私「立川にこんな喫茶店があるなんて、知らなかったです。」 しばらくすると、頼んでおいたアイスティーとクリームソーダが来た。 が、このクリームソーダにはお互い裏切られたのだった。 彼「・・・なんか、(店の入り口に飾ってあった)サンプルと違う。」 私「(アイスの量が、)すごい山盛り・・・。」 彼が注文したクリームソーダというのは、メロンソーダの上に、まるで雪山を思わせるようにバニラアイスクリームが盛り付けられていて、いつ雪崩が起きてもおかしくない状態だった。そして、そのそばには、小さい深皿とアイスクリーム用のスプーンが1つ置いてある。そのことに、彼が気付くと・・・ 彼「取り皿だよね、これ・・・。分けてあげる。」 彼は少しと言っていたが、どうみても普通のアイスクリーム一人分半にしか見えなかった。分けてくれても、彼のクリームソーダのアイスは、まだ量が多い。グラスの中では、アイスがメロンソーダに溶け出して、乳白色の割合がどんどん増している・・・。 私にアイスを分けてくれると、彼が口を開いた。 彼「実は、(8月)10日に言った頼みごとのことなんですけどね・・・。」 私「はい。」 彼「・・・実はね、僕、来年の3月24日で死ぬんですよ。」 私は、彼のこの一言に一瞬固まった。 彼は、私のその反応を見て、苦笑を浮かべる。 私「・・・なぜ?」 彼「自分勝手な理由になってしまうんだけどね、これ以上、年老いて生き続けることに限界を感じてしまったというか、何と言うか・・・。」 私は、彼の言っていることを理解することが出来ず、堪らず・・・ 私「・・・スイマセン、失礼します。」 そう言うと私は、バッグを肩に掛けると席を立つ。 それに気付いた彼は慌てた。 彼「え・・・。まっ、待って下さい!」 彼は、その場を離れようとする私を止める。 彼「お願いです!最後まで聴いてもらえませんか?帰っちゃうのは、それからでも良いですから・・・。」 彼は、帰ろうとする私を宥めた。 そして20分後、私が落ち着いたのを確認すると、彼はなぜ来年の3月24日で死のうとしているのかということを少しだけ語り始めた。 彼「ぼくがそう思ったのは、52歳のときで、まだ葬儀屋で働いていたとき。7月のある日、ほかのスタッフ達と立川の総合病院に亡くなられた方をお迎えに行く途中で、偶然、病室の一室を見てしまって、愕然としたんです。体中に複数のチューブやケーブルが這い蹲っているお年寄りがベッドに横たわっている姿・・・。自分の将来の姿とダブって見えたんですよ・・・。」 私「・・・確かに、昔からテレビドラマとか、『老人Z』とかで、そういう入院患者像を見たことあります。でも、だからといって・・・。」 彼「そうだけど・・・。あなたはまだ若いから、自分が年老いて、朽ちてゆくということを実感していないから、変に思っているんでしょう。これは人によるかもしれないけど、自分が年老いてゆくということを実感すると、なんか生きることの辛さが増しちゃうんですよ・・・。そこに、あれを見てしまったから、結構応えた。」 私「・・・うーん、年をとることへの恐怖ってやつですか・・・。だからと言って・・・。」 彼「あなた、今までの人生の中で良かったことあります?」 私「2001年と2005年のイベントで坂本龍一さんと握手したこと・・・ですかね。あとは、特に無いです。昔の記憶は全く無いもので・・・。」 彼「うっ!・・・いいな、教授との握手。でも、昔の記憶が無いって・・・?」 私「自分の人生は良かったことが無かったので、25歳のときに自分で自分の多くの記憶を消してしまったんです。」 彼「消してしまったですか・・・。」 そして、私と彼は5分ほど沈黙してしまう。このときは、彼の自決の真相を聞き出すことが出来なかった・・・。 彼「・・・僕は来年の3月24日で自決します。そこで、あなたにお願いがあるんです。僕が死ぬ前まで、僕と付き合ってくれませんか?」 私「・・・は?」 彼「お願いです!ば、バカなこと言ってるかもしれないけど、僕の相手になってくれそうなのは、あなたしかいないんです!」 彼は、再び席を立とうとする私をやる気にさせようと必死にだった。 彼の私への説得は10分ほど続いた。 彼に説得された私は、渋々彼と付き合うことに決めたのだった。 「あなたのためになると思うから・・・。」という一言で・・・。それにしても、この一言に私は何度騙されてきたのだろうか? そして、喫茶店の長時間の冷房に堪えた彼と私はその場を後にし、南口のほうに歩いた。 ******************************************************************************************* 南口のほうに行くと、ビルばかりと人混みばかりの北口とは違い、目の前には尋常じゃないほどに、様々なパチンコホールでは客寄せ合戦が繰り広げられている。 彼「このあと、何か予定とかありますか?」 私「別に。今日のために、バイトとか休んで来ましたから。」 彼「僕も、今日はバイト休んでいます。あの、もしよかったら・・・コレしませんか?」 彼は、右手を何かをつかんで捻るような動作をしている。その動作を見た私は、意味がすぐに解った。 彼「あなたのブログを観たので・・・。どっスかね?」 私「パチンコですか・・・。ゲーセンの?」 彼「出来れば、(パチンコ)ホールのほうで・・・。」 ・・・で、彼と私は話し合いをして、交番の近くにあるパチンコホールで「※1CRA新世紀エヴァンゲリオンプレミアムモデル」を打とうということにした。 そして、5時間半ほど打って、立川駅の改札で私は彼と別れたのだった。 このパチンコをきっかけに、「もしも彼のことを何らかの形で発表するときは、彼のことは“山下テツロー”と呼ぶことにしよう」と決めた。 パチンコを打っているときの彼の顔は、(彼にも、山下達郎さんご本人にも、失礼かもしれないが、)なぜか山下達郎っぽかった・・・。 ****************************************************************************************** その日の晩、次のようなことを彼のケータイにメールした。 ↓ 「○○(※彼の本名。)さん。今日はどうも。 結構出してましたね。あのエヴァ、どうでした。甘いスペックで当たりを引きやすいのいいけれど、※2ドル箱を満タンにするまで時間掛かりましたね・・・(-_-;)」 それから、1時間後。彼からメールが届いた。 ↓ 「ボクは確か(ドル箱)3箱半ぐらいだったような・・・。まったく15ラウンド(昇格)がなかったから、※3ドル箱を満たすまでに結構時間が掛かったので、ゲームを楽しめずに、なんか疲れちゃいました・・・。敏宮さんは15ラウンド連発してたじゃないですか!」 確かに、このとき私は4回ほど15ラウンド昇格があったために満杯のドル箱を4箱獲得した。が、それ以降、私が打っていた台の波はおとなしくなってしまい、私の手元には大当り出玉・1箱弱しか残らなかった・・・・・・。 →その3へ引きずる・・・。 _+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_+_ ※1・・・2008年5月ごろに登場した、『CR新世紀エヴァンゲリオン・セカンドインパクト(※パチンコ『CR新世紀エヴァンゲリオン』シリーズの第2弾。2006年2月に登場。)』を、もっと大当たりしやすいように改良したパチンコ機種。型式名:CRA新世紀エヴァンゲリオンセカンドインパクトYF。主なゲームフローについてはコチラ。この機種に関するブログでの書き込みはコチラ・・・(^_^;; ※2・・・主に、大当たりなどで出した玉(またはメダル)を入れておく容器。両側に取っ手が付いているものが多く、形状や箱の深さなどは様々。 ※3・・・このメール内で、彼が「ドル箱を満たすまでに結構時間掛かった・・・」と書いているが、これは名前に“CRA(メーカーによって、「甘デジ」「遊パチ」とも呼ばれている。)”とついているパチンコ機種の特長のひとつで、通常のパチンコと比べて大当りしやすくなっているが、大当りラウンド数が5ラウンド又は7ラウンドと少なくなっているため(※通常のパチンコの大当りラウンド数は15ラウンドという機種が多い。)である。ただし一部のCRA機種では、ある一定条件を満たすと大当りラウンドが15ラウンドに変わるというものもある。 |
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